便利なだけでは済まされない、精神医療の現場で見えてきた問題点
オンラインで心の悩みを相談できる「オンラインメンタルクリニック」。コロナ禍以降、需要が一気に拡大し、予約不要・スマホひとつで診察が受けられるサービスも増えています。
しかし、この便利さの裏には、慎重に考慮すべき課題やリスクも存在します。本記事では、オンライン精神医療における主な問題点を整理して紹介します。
1. 対面診察と比べたときの診療精度の低下
精神科では、**非言語的な情報(表情、体の動き、声のトーン)**が診断において重要です。オンライン診察ではカメラの角度や画質の問題で、これらの情報を十分に得られないことがあります。
- 実際の様子を把握しづらい
- 自殺念慮・衝動性など、緊急性のある症状を見逃す可能性
2. 医師と患者の信頼関係が築きにくい
対面に比べ、オンラインでは心理的距離感が残りやすいという声もあります。画面越しのやりとりでは、表情の微妙な変化や沈黙の意味を読み取りづらく、信頼関係の構築に時間がかかることも。
3. 薬物治療への依存リスク
一部のオンライン診療では、短時間で診察→すぐに薬処方という流れが主流になってしまい、薬物依存や多剤併用のリスクが高まっているという指摘もあります。
- 初診での安易な抗不安薬・睡眠薬の処方
- 継続的なフォローアップの欠如
4. 個人情報・プライバシーの懸念
オンライン診療では、個人情報や診療内容がデジタルで保存・通信されます。セキュリティが不十分なシステムでは、情報漏洩のリスクが現実的に存在します。
- 通信の暗号化や認証システムが不十分な例
- 医療プラットフォーム会社と医師の連携不備
5. 利用者側のITリテラシーの差
高齢者やデジタルに不慣れな方にとっては、アプリの操作や予約の手順が障壁になる場合があります。また、通信環境が不安定な地域では、そもそも診療が成立しにくいことも。
6. 緊急対応の困難さ
自殺のリスクや急な症状の悪化が見られた場合、オンライン診療では即座の介入が難しいという課題があります。実際に、医師が患者の所在地を把握できず、救急搬送が遅れたケースも報告されています。
7. 医師・医療機関の質のばらつき
急速な普及により、経験や専門性に乏しい医師による診療や、営利目的が先行した運営体制も問題視されています。
- 医師1人が1日100人以上を診ることも
- 精神科専門医でない医師が診療する例も
まとめ:技術の進歩に「人の目」と「倫理」が必要
オンラインメンタルクリニックは、忙しい現代人や遠方在住の方にとって非常に便利な手段です。しかし、心の診療は「便利さ」だけでは測れません。人と人との関係性・信頼・慎重な判断が求められる分野であることを、私たちは忘れてはいけません。
これからは、オンライン診療の利点を活かしながらも、制度的・倫理的な整備と医療の質の確保が求められる時代です。

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